エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 その言葉は雇われ妻の演技ではなく、心から出たものだ。善次郎と会えなくなることも、晴馬との暮らしが終わってしまうことも……すごく寂しい。

「美月ちゃん」

 なんだかあらたまった声で、善次郎は美月に呼びかけた。

「かわいい孫を、晴馬を……どうかよろしく」

 目を細めてほほ笑む彼の姿に、美月は言葉を詰まらせる。こんなにも優しい人を最後まで騙し続けていいのだろうか。

(私は、晴馬の思い人じゃないのに……)

「あの、おじいさま」

 意を決して、顔をあげる。

(ごめん、晴馬!)

 すべてを打ち明けてしまおうと思った。そのうえで「晴馬の人生は彼自身に任せてあげてほしい」と頼むつもりだった。

 けれど、頭をさげようとした美月を善次郎が目線で制する。

「わしはぜーんぶ知っておる。だから謝る必要はないぞ」
「え?」
「婚約者なんて、真っ赤な嘘なんだろう?」

 彼は不敵な笑みで胸を張る。

「わしを誰だと思っているんじゃ。若いふたりの嘘くらい、最初から気づいておったわ」
「えぇ?」

 驚愕する美月を前に、善次郎は「ふはは」と明るい声をあげる。

「だいたい、晴馬は昔から嘘が下手じゃ。嘘をつくときは決まって、右の眉がピクピクするからすぐにわかる」

(さ、最初から?)

 美月はドッと脱力してしまった。そして、自分たちの浅はかさを思い知る。

(そうよね。この人は財界の重鎮、北原善次郎なんだもの)
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