エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 美月は気を引き締めて返事をする。本当に爆発が起こると思ったわけではないが、もし警察がお客さまを退避させると決めたらホテルとしては一大事だ。今はチェックアウトとチェックインの隙間時間なので館内に滞在する人数はもっとも少ない。だが、このあとすぐに今夜の宿泊客がやってくるし、夜はいくつか宴会の予定もあったはずだ。

(何事もないといいけど……)

 そう思った瞬間だった。ドンという衝撃が美月の身体を貫く。足元から突きあげられるような感覚は、十年以上前にあった大地震を思い起こさせた。

(え、地震?)

 いつか来ると言われていた首都直下型地震がとうとう起きてしまったのだろうか。

 だが、それが間違いだと美月はすぐに知ることになった。
 
 日時の指定すらない曖昧な爆破予告を送ってきた犯人は、本気だったのだ。

 三十七階建てのパールトンホテル、もっとも高級なスイートルームのある三十六階に仕掛けられた爆弾が爆発した。

 パールトンホテルの名に懸けて、お客さまの命を守らなくてはならない。美月たち従業員は避難誘導のために走り出す。

(なにが……起きているんだろう)

 恐怖にゆがむお客さまの顔、助けを求めて伸ばされる手、悲鳴、怒声。阿鼻叫喚を絵に描いたような光景が美月の前に広がっている。

 たくさんの幸せと笑顔を生み出すはずのホテルでこんな惨劇が起こるなんて――。
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