空飛ぶ消防士の雇われ妻になりまして~3か月限定⁉の蜜甘婚~
二章 空飛ぶ消防士と雇われ妻
二章 空飛ぶ消防士と雇われ妻


 晴馬と再会したあの日から一週間と少しが過ぎた、金曜日。夜九時過ぎに美月は仕事を終え、従業員のロッカールームへと向かう。
 
 帝都グランデホテルの場合、コンシェルジュ担当に夜勤はなく勤務終了時刻は夕方六時。だが、コンシェルジュは絶対にお客さまにNOを言ってはいけないという鉄則がある。お客さまからの要望次第では、かなり遅くまで残ることも多々ある。今日くらいの時間ならマシなほうだ。

 制服を脱ぎ、白いボートネックのカットソーとネイビーのワイドパンツに着替える。シニヨンはほどいて、シュシュで低めのポニーテールにまとめた。

 荷物をまとめて帰ろうとしたところで、フロント担当の女性社員ふたりがお喋りしながら部屋に入ってきた。美月を見て、ふたりは気まずそうに顔を背ける。

(そんな腫れもの扱いしなくても……)

 円満退職ならこんな事態にはならないのだろうけど、美月の場合はそうではないので最終勤務日まで針のむしろで過ごすことになりそうだ。

(まぁ、仕方ないか。色恋沙汰で揉めたあげく無責任に退職する人間と見えているだろうし)

 正直、心外ではあるけれどもう否定する気力もない。

「おつかれさまでした。お先に失礼します」

 美月は彼女たちにあいさつをして、ロッカールームのドアノブを回した。

 
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