エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 美月と彼は幼なじみ。すごく近しい間柄だった。それなのに、二十年間も疎遠だったのには理由があるのだ。

 * * *

 小学校が終わったら、自宅ではなく北原家の屋敷に母、月子(つきこ)を迎えに行くのが美月の日課だ。港を見おろす小高い丘の上に建つ洒落た洋館、英国式ガーデンの美しさは近隣でも随一と評判だ。美月のたったひとりの家族である月子はここでお手伝いさんとして働いている。朝は早いけれど夕方には仕事を終えることができるので、シングルマザ―として美月を育てる月子にはありがたい仕事のようだ。もう二年、世話になっている。

「ただいま、お母さん!」

 庭の花たちの世話をしている彼女の背中に、元気よく声をかける。

「おかえり、美月。あと少しで仕事が終わるから待っていてね」
「うん。なにか手伝えることはある?」

 優しい母を少しでも助けたくて、美月はいつもそう尋ねる。娘のそんな思いに応えて、月子は必ずちょっとした仕事を任せてくれた。

「じゃあ、そこにあるホースを蔵に片づけてきてくれる? 重いけど、ひとりでできるかな?」
「大丈夫、任せて!」

 美月はぐるぐる巻かれたホースリールをよいしょと持ちあげ、歩き出す。

 屋敷の主である北原夫妻はおおらかな性格で、従業員の娘でしかない美月が庭をチョロチョロしていても笑顔で受け入れてくれていた。
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