エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「ま、返事は今すぐじゃなくていいから少し悩んでみて」
「う、うん」

 晴馬はやや困った顔で、眉尻をさげた。

「そんな顔されると、面接の権利くらい無条件で……と言いたくなるな。けど、切羽詰まってるのは俺も同じだから。あくまでも取引にさせてもらうぞ」
「わかってる。数日だけ考えさせて」
「了解。じゃあ送るから帰ろう。もう遅いのに、引き止めて悪かったな」

 ひとりで大丈夫だと伝えたけれど、彼は美月を自宅の前まで送ってくれた。

 美月の自宅はごく普通の1LDKの賃貸マンション。小さなキッチン、広くはないけれど南向きで日当たりのよいリビング。そしてリビングとは引き戸で仕切られただけの五畳の寝室。シャワーを済ませ、パジャマに着替えた美月は寝室の扉を開ける。
 ベッドはセミダブルと大きめなので、ほかの家具はPCデスク兼ドレッサーにしているシンプルな木目のデスクだけ。

 そこに座って、いつもどおり夜のスキンケアを始めた。最近やや気にしているおでこのシワにクリームを塗りこみながら、今夜の出来事を回想する。

(妻のふりとパールトンホテルの面接……う~ん、悩ましいなぁ)

 彼のおじいさまを騙すようなものという点が気になるし、晴馬にこれ以上近づくことに不安もあった。

(晴馬といると、どうしてもあのことを思い出す。私は彼にひどいことをしたから……)
< 49 / 180 >

この作品をシェア

pagetop