王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
「ええ、もちろん。もとより、結論を急かすつもりはありません。まだ私たちの関係は婚約者。私が未成年である以上、すぐに結婚式を挙げることもあり得ませんし、この話を白紙にすることは充分可能です。……ゆっくり考えて、その上であなたの答えをお聞かせください」

 ◆◆◆

 婚約者との顔合わせから早二週間、クレアが寝起きする場所は神殿のままだ。
 本来ならば顔合わせと同時に王宮に戻る手筈だったらしいが、王太子であるジュリアンの意向でその話は撤回された。以前、スケジュールを詰め込みすぎたことにより聖女が倒れたことを指摘し、王太子妃教育もしばらくお休みになった。王太子様々である。
 おかげで王宮に通う理由もなくなり、貴族たちの好奇な視線にさらされることなく過ごすことができている。女神像に祈りを捧げ、国の守りを願う。
 政務に追われているジュリアンは多忙を極めているようだが、毎朝欠かさず花を一輪、贈ってくれている。朝摘んだばかりと思われる花はどれも瑞々しく、花瓶に生ける花の色や種類が日ごと増えていく。
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