王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 白で統一された部屋に色鮮やかな花たちが加わり、その一角を見るたびに自然と口元がほころぶ。もし贈り物が高級なドレスや宝石だったなら気後れしていただろうが、生花であれば心置きなく受け取れる。
 最初は一輪挿しの花瓶を使っていた。
 だが日に日に本数が増えたため、花瓶も大きいものに変わった。
 今では大小の花瓶に分けて季節の花が生けられている。花の種類や色が入れ替わったものもあるが、比較的長く楽しめている。

(……さて、今日のメッセージは何かしら)

 サイドテーブルに置いていたミニサイズの封筒に手を伸ばす。
 花が毎日届くようになった三日後から、純白のメッセージカードが同封されるようになった。初めて見つけたときは緊張したが、そこには「おはよう」と簡素な一言が綴られていた。
 まるで友人のような気軽さに拍子抜けしたのをよく覚えている。
 王太子としてではなく、下町で会ったリアンとしての気遣いに心が温かくなった。
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