男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
(好みの人だと、こんなにも違うものなの――?)

 それに戸惑っていれば、洗面台の上に置いていた私のスマホがぶるると震える。

「……電話、ですか?」

 丞さんにそう問いかけられて、私はゆるゆると首を横に振る。

「め、っせーじ……」

 これはメッセージアプリの通知音だ。こんな朝からメッセージを送ってくるのは、一人しかいない。

 ……お母さんだ。

「そう、ですか」

 彼の声が何処か沈んだ。

「その、心配されているのなら……」
「だ、いじょうぶ、です」

 どうしてこう返事をしたのかは、わからない。

 だって、ここで肯定すれば角が立たずに断れたのに。

「……あの、もっと、したい、です」

 どうして私の口がそんな言葉を紡いだのか。それは生憎――私自身にもわからなかった。
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