男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
「あ、あのね、彼はとっても忙しくて……」
「とっても忙しくても、彼女の親に挨拶するくらいは出来るでしょう? さっさとお休み合わせなさい」
「そう、言われても……」

 そう言われても、困るのだ。だって私に彼氏はいない。今まで一度もいたことがない。

 あえて言うのならば、私の頭の中にいる妄想上の彼氏くらいだろうか。

「あなたに彼氏が出来たというから、私はとっても会うのを楽しみにしているのに……」

 ……それは、その場しのぎでついた嘘なんです。

 と、今更言える雰囲気でもなくて。私は頬を引きつらせる。

(確かに、今まで男っ気がなくて心配されていたけれど……)

 お母さんは一人娘の私にいつまで経っても恋人が出来ないことを危惧していた。

 それが余計なお節介につながり、お見合いでもしてみないかと言ってきたのだ。

 もちろん、私はそれを拒否。理由は理想じゃない人との結婚なんて考えられないから。

(かといって、彼氏がいるなんて嘘つくんじゃなかった……)

 でも、さすがにそれは悪手だった。お母さんの性格上、こうなるのは目に見えていたのだから。
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