男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
「ま、まぁ、とにかく。彼との都合が合ったら、紹介するから!」
「あ、杏珠!」

 来て早々だけれど、このままここにいるのは気まずくて。私は立ち上がって早足でお母さんの病室を出て行く。

 ……せめて、彼氏と別れたとか、そういう風に嘘を回収すればよかったのに。

 それさえも出来なくて、私はどうすることも出来ずに頭を悩ませる。

「……とりあえず、一旦コーヒーでも飲んで落ち着こう」

 病院の一階にある売店のコンビニで、アイスのカフェラテでも買って飲もう。そうすれば、いい考えが思い浮かぶかもしれない。

「……彼氏、かぁ」

 何度も言うように、私は年齢イコール彼氏いない歴だ。つい先日処女ではなくなったものの、彼氏がいたことがないのは間違いない。

 ……そう、私は彼氏いない歴イコール年齢よりも、先に処女を脱してしまったのだ。……なんだこれ。

「誰か適当に捕まえて……って、いやいや、さすがに私も理想じゃない人と恋人ごっこなんて出来ないわ」

 しかも、お母さんのことだ。このまま結婚しろとか言いかねない。

 そうなれば、相手に多大なる迷惑をかけることになる。

「恋人、恋人……何処かに、売ってないかしら?」

 もう頭がこんがらがって、ついついそう零す。

「レンタル恋人みたいなサービスあったわよね。……そのサイトでも見てみるかなぁ」

 後腐れなくやるならば、それしかない。
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