男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
 ぽかんとしつつお二人の様子を見つめていると、女性の視線が私に移る。

 ……なにを言えばいいかわからなくて、私は頭を軽く下げた。

「わぁ、お綺麗なお人ですね!」

 女性は私の気持ちなんて知りもしないのか、ニコニコと笑っている。その笑みは屈託のない無邪気なもので。……私とは全然違うと、思い知らされてしまって。

「あと、ごめんなさい、真田さん。しーくん、今、急遽買い出しに出てて……」

 だけど、突然出て来た知らない人のお名前に、私はほんの少しの違和感を抱いた。

 『しーくん』とは誰なのか。そして、視界に入ったのは――女性の左手の薬指。そこには、指輪があった。

 ということは、彼女は既婚者なのだ。丞さんとは、そういう関係じゃないということなのか。

「そうなんですね。まぁ、センパイがそういう適当な人なのは、知ってるんで……」

 ポリポリと頬を掻いた丞さんが、私を手招きする。だから、私は彼に続いて歩いた。

 お店の中はなんといえばいいのか。建物の良さを活かした古民家風。

 丞さんに連れられるがままに席に腰を下ろすと、先ほどの女性がお冷を持ってきてくれる。
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