強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
「雛川さん!?」
「はい」
 なんで名前を知ってるんだろう。

「ぜんぜん雰囲気違いますね。すごくいいです!」
「ありがとうございます」
 咲弥はぎこちなく笑ってお礼を言った。

「あのときはありがとうございました!」
 ペコっと京が頭をさげる。

「ごめんなさい、覚えてないんですが」
「一年前、男の人に絡まれていたところを助けてもらいました。まだ中学生のときです」
「あ、あのときの?」

 思い出した。仕事帰りに酔ったチンピラにナンパされていた女子中学生を見かけ、声をかけたのだ。男が殴りかかって来たから彼女に逃げて通報するように言い、咲弥は男と格闘し、とりおさえた。その後、彼女の通報で駆け付けた警察官に男を引き渡したのだ。

「いらっしゃるって聞いて、お会いしたくて来たんです!」
「今日は危ないって言ったんだけど、聞いてくれなくて」
 泰輔が言う。

「京を警察署に迎えに行ったとき、俺も会ってるんだけどな。覚えてないか?」
「そうなんですか?」
 咲弥はけげんに悠雅を見た。

「まったく眼中にないみたいだな」
 泰輔が笑う。
 悠雅はため息をついた。

「会えたんだから、京は約束通り帰れよ」
「えー!」
「そろそろ開場だ。よろしく頼むよ、刑事さん」
「もちろんです」
 悠雅の軽い口調に、咲弥はかちんとしながらも答えた。



 悠雅は咲弥を連れて財界の重鎮と歓談してまわった。
 不動産とは関係なさそうな重工業の社長や食品業の社長、市長、さらには警察の幹部もいた。テレビでしか見ないようなお歴々に咲弥は緊張の連続だった。

 悠雅は笑顔を絶やさずそつなく対応している。
 すごいな、と素直に感心した。

 女性たちからは熱い視線を送られていたが、彼はまったく動じなかった。咲弥がいたたまれないくらいだった。
< 13 / 43 >

この作品をシェア

pagetop