強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
「疲れたか? 少し休むか。食事もとってないだろう」
 人が切れた直後、悠雅は咲弥にたずねる。

「平気です」
 咲弥はなるべくきりっとして答えた。
「俺は疲れた。あちらで軽食でも」
 咲弥の腰を抱くようにして悠雅が歩き出す。

「離してください」
「離す必要を感じない」
「強制猥褻で逮捕してあげましょうか」
「口説くこともままならないな」
 悠雅は苦笑して手を離した。
 軽食が並べられたコーナーで、悠雅は咲弥を見る。

「君はなにが食べたい?」
「勤務中ですのでいりません」
「あちらの刑事さんはたくさん食べているぞ」
 見ると、諒也が皿にてんこもりにした料理をおいしそうに食べていた。

「あいつ……!」
 咲弥が諒也に向かって歩き出したとき。
 慣れない高いヒールが絨毯にひっかかった。

「あっ」
「危ない!」
 気が付いたら悠雅に抱きかかえられていた。逞しい腕と胸がすぐそばにある。彼の体温が伝わってきて、顔がかあっと熱くなった。

「大丈夫か?」
 耳元に優しくささやかれる。
「大丈夫です!」
 咲弥は慌てて体を引きはがした。

 咲弥は今まで男性とつきあったことなどなかった。
 身長へのコンプレックスから、どうしても恋愛に一歩を踏み出せずにいたからだ。

 逮捕術の訓練などで男性と接することはあったが、それらは訓練であり、相手を仮想の犯人と見立てて真剣に対応している。こんなふうに男性を意識することなどなかった。

「顔が赤いが、本当に大丈夫か?」
 覗き込まれて、咲弥は必死に目を逸らす。
 クッと笑う声が聞こえて、咲弥はさらに顔を伏せた。
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