強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
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中学生のころ。3年生になった彼女に、大学1年生だった泰輔は進路を聞いた。
桜が咲き乱れる庭でのことだった。
「将来、どうするの?」
「警察官になりたいんです。父みたいな立派な刑事に」
目を輝かせる咲弥に、泰輔は眩しそうに目を細めた。
「そうか……警察官に」
咲弥は彼が応援してくれるものだと思っていた。
だが、彼はどこか悲し気に見えた。
「応援、してくれますか?」
不安になって聞くと、彼は笑顔を浮かべた。
「もちろん応援するよ。がんばってね」
そう言って彼は咲弥を抱きしめた。
咲弥はどきどきして、硬直した。
その額に、背の高い彼の唇が軽く触れた。
キスをしたのか、ただの事故なのか、咲弥にはわからなかった。
桜が舞い散る中、彼は黙って離れる。
そのまま、二度と彼女の前には現れなかった。
どうしてなのか、当時の咲弥にはわからなかった。
だいぶたってから、自分が警官になる道を選んだからだ、と気が付いた。
だから、元ヤクザの息子である泰輔とは一緒にいないほうがいいと、縁を切ったのだ。
気が付いたとき、咲弥は号泣した。警察官になるなんて言わなければ良かった。
だが、彼女のために彼が引いてくれたのなら、なおさら夢を実現させなくてはならない。
このときから、夢は自分のためだけのものではなくなった。
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「妬けるな」
悠雅の声で、咲弥は我に返った。
「その様子では、キスくらいはしていそうだ」
「え、や、ちが」