強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
 断ったはずの鍵とキーホルダーが入っていた。
 あのときだ。腰を抱き寄せられたあのときに入れられたに違いない。
 咲弥はむしゃくしゃとポケットに戻した。こんなものに時間をとられている場合ではない。

「応援は」
 諒也に聞く。
「呼びました」
「二分前の画像だったから、まだ中にいるはずよね」
「たぶん」
 諒也は不安そうな声を出した。

「様子だけでも見ておこう」
「ちょ、危ないよ!」
 諒也が止めるのも聞かず、咲弥は中に入る。
 あきらめたように諒也は続いた。


 
 足音を忍ばせ、二人は慎重に進んだ。
 セキュリティードローンが写したのは一階だ。
 だが、もう移動しているかもしれない。

 その場合、潤香はどうなっているのか。
 仲間なのか、鉢合わせしただけなのか。
 どちらにしても良い状況であるとは思えず、咲弥は緊張した。

 一階には誰もおらず、壊れたドローンが床に転がっているだけだった。
「手分けした方がいいかもね」
「ダメだよ、敵は複数なんだから」

「様子を見るだけだから。菜原さんが危険な状態なら早く見つけないと」
「そうだけど」

「地下駐車場もあるのね。私は地下を見るから、あなたは上を」
「無茶しないでよ」
「わかってるって」
 答えて、咲弥は地下駐車場への階段をゆっくりと降りた。



 咲弥が階段を降りると、人の気配があった。
「来いよ!」
「離して! 痛い!」
 男の声に、潤香の声が重なる。
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