強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
「一億は嘘だろ。俺たちをだます気だ」
「もう用意してある」
 悠雅が顔を向けると、もう一人の男——サングラスをした泰輔が後部座席のドアを開けた。ジュラルミンケースを取り出し、開いて彼らに見せる。かき混ぜるようにして、中の札束がすべて現金であることを見せつけた。

「すげえ!」
「マジかよ」
 男たちが興奮して声を上げた。
 だが、キングだけは冷静だった。

「それだけじゃ本物の札束かわからない。こっちによこして確認させろ」
「いいだろう」
 悠雅が答えると、泰輔はケースの蓋を閉じた。

「変な真似したら撃つからな」
 キングは銃を構えて言う。
 泰輔は一億の入ったジュラルミンを持ち、彼らの前まで運んだ。

「ダメよ、こんなやつらに!」
 咲弥は叫ぶが、悠雅も泰輔も答えない。
 ケースを置いて泰輔が離れると、キングは仲間に顎をしゃくって合図した。
 仲間の男がケースを開いた。
 直後、ケースから煙幕が出た。

「うわ!」
 げほげほと咳き込む。
 悠雅の車のライトが消えた。
 打撃音が響き、バンのライトも消えた。
 直後、格闘するような音が響く。
 なにが起きているの。
 まったく状況がわからず、咲弥は全身を緊張させて必死で暗闇に目をこらした。

***

 社長室で泰輔と打ち合わせをしていた悠雅は、ゼコムから連絡が来たと聞いて目を細めた。

 取り壊し予定のビルに、不審者が侵入したと言う。そのビルは獅子堂不動産が所有するまでは半グレがたまり場として使っていた。
 侵入者は女性が一人だった。
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