強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
「先に撤収する?」
 泰輔が聞く。
「どのみち事情聴取されるだろうからな。警察を待とう」
 彼らが毅然と立つ駐車場に、赤ランプを回転させたパトカーが何台も入って来た。



 応援にかけつけた警官によって、半グレたちは逮捕された。
 取り調べによって、脅迫メールも狙撃も彼らの犯行だということがわかった。
 悠雅と泰輔は厳重注意を受けたが、咲弥たちを守ったということで罪には問われなかった。

 キングは泰輔に撃たれたと主張したが、警察はそれを信じなかった。
 警察は犯罪者の嘘に慣れている。彼らは罪から逃れるために嘘を吐くのが普通だ。

 泰輔は銃を持ったキングともみ合いになってキングが誤射したと言った。
 泰輔が弁護士であることが証言に信憑性を持たせた。
 加えて、拳銃からはキングの指紋しかとれなかった。

 刑事裁判の原則は証拠裁判主義だ。だから警察も証拠を重視する。
 
 その後、キングが率いる半グレグループの全員が取り調べを受け、半数が逮捕された。
 キングが経営していたホストクラブも摘発を受けた。悪質な売掛をしていたことが発覚して、処分を受けた。

 咲弥は思う。
 こうして一つ潰れてもしばらくしたら次が現れるだろう。いたちごっこだ。
 だけど、自分たちががんばらないといつまでたっても変わらない。

 咲弥は毎日、捜査に励んだ。
 悠雅からはなんどか連絡が来ていた。諒也が勝手に連絡先を教えたからだ。
 だが、それに応じる余裕は咲弥にはなかった。

 悠雅は泰輔以外で唯一彼女を女扱いしてくれた男性だ。
 背のコンプレックスも感じなくてすむし、口説かれもした。
 危機的状況に駆けつけて助けてくれた。頭を撫でる彼の手は優しかった。

 どうしても心が揺れる。期待すらしてしまう。
 だけど、もしそれが砕かれるようなことがあったら。
 怖くて、一歩を進めることなどできなかった。



 捜査を続けるある日、鑑識からメールが届いた。
 管理売春の顧客リストのうち、消去されていたものを復元できたという連絡だった。
 復元されたリストを見て、咲弥は思わず立ち上がった。
「どうしたの?」
 諒也が聞くのもかまわず、咲弥はノートパソコンを持って久之の席に向かう。

「課長、話しがあります」
「なんだ」
 めんどくさそうに、彼は答える。
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