強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
「課長が捕まったって本当ですか?」
足をひょこひょこさせながら来た潤香が、咲弥に尋ねた。
「本当よ」
「良かった。あのセクハラ課長、嫌いだったんですよね」
潤香は笑ってそう言った。
「足、どうしたの?」
「背が高いのに憧れてて、昨日、とうとうハイヒールを履いてみたんですよ。そしたらくじいちゃって」
えへへ、と潤香は笑った。
「菜原さん、雛川さんのこと大好きだよね」
諒也が言う。
逆だよ、と思った咲弥の耳に、意外な言葉が聞こえた。
「雛川さんは、私の憧れなんです」
目をきらきらさせて、潤香は言う。
「背が高くてかっこよくて刑事で。私も刑事になりたかったんですけど、性格的にも体力的にも無理だって思って事務になりました」
「そうだったの」
咲弥は目をしばたいた。
憧れだなんて言われて、それが実感できなかった。
「ピンチに助けに来てくれて、ますます雛川さんが好きになりました」
「え?」
「今度、一緒にお茶しませんか?」
「いいけど……」
「やった!」
潤香は無邪気にはしゃぎ、刑事課を出て行った。
後ろ姿を見送り、咲弥は自分を恥じた。
背が高いことをからかわれ続け、それが当然になっていた。だから、彼女の素直な憧れによる発言を、長いこと嫌がらせだと勘違いしていた。
「いいなあ、菜原さんとデート」
諒也が心底うらやましそうにつぶやく。
「仕事しよ、仕事」
咲弥は席に戻り、パソコンに向かった。
なんだか心がふわふわして、落ち着かなかった。