弟は離れることを、ゆるさない


俺のキスで腰を抜かしたらしい琴音は、ガクンと膝から崩れ落ちた。

「大丈夫か?」

顔を真っ赤にして目を潤ませ、色っぽい表情で俺を見つめる琴音。

この表情を俺はずっと見たかった。

「……葵、慣れすぎだよ」

ハアハアと息を切らす琴音にそっと手を差し出す。

「あいにく俺もキスは初めてだよ」

「……うそ。だって、女の子連れ込んでたじゃない」

「でもキスはしてない。キスは琴音が初めて。こんなに心地いいって知らなかった」


ニッと笑うと、琴音は申し訳なさそうな表情をして俯いた。俺の好きな人が琴音と知らない琴音は、

「……キスは、好きな人とした方がよかったんじゃん。なんで私なの……」

と、消えそうな声で呟いた。

「琴音がよかったから」

「意味分からない。どうせ他の女の子にも同じようなこと言ってるんでしょ」

「見てたなら分かると思うけど、あんな乱暴な抱き方して、そんな恥ずかしいこというわけないだろ」


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