弟は離れることを、ゆるさない
教室に入ると、紗絵が満面の笑みで挨拶をしてきた。
「琴音、私この前合コンで仲良くなった男の子と付き合うことになったの!」
とても嬉しそうに話す紗絵は、完全に恋する乙女の顔といったような感じだった。そんな紗絵を見ていたら私も嬉しくなる。紗絵には幸せになってほしいと思っていたから素直に嬉しい。
「紗絵、よかったね」
紗絵に祝福の言葉を伝えると、紗絵は照れ笑いをしながら「で、琴音はあの男の子とはどうなったの?」と質問を投げかけられた。
合コンが終わってから、悠生くんとは毎日連絡を取っている。悠生くんの連絡はマメで、おはようの文章から今日何をしたという日常報告があり、おやすみで終わる。だからといって、何か進展があるわけではない。
ーーそっけなく返す私の返事が、進展をできなくしてしまっていることも分かっていた。