弟は離れることを、ゆるさない
確かに私から悠生くんと付き合いたいと言ってしまったけれど、決められたくはない。
「別によろしくしてない」
ムキになって言い返すと葵の表情も強張った。
「俺はおまえの望み通りに家族になる努力をしてんのに、俺に何を望んでんの」
「家に帰ってきてほしい……」
「そのうち帰る。もう予鈴なるだろ。早く戻れよ」
冷たい目で私をあしらう葵。
葵と家族になるということはこういうことなんだ。
一歩一歩階段へと足を踏み出す。上から葵を見下ろすと、「じゃあな、姉ちゃん」と、私が姉であることを強調し、背を向け私の元から去って行ってしまった。
これでいい。
なのに、どうしてこうも心が苦しいんだろう。
家族を望んでたはずなのに、葵から「姉ちゃん」と言われる度に苦しくてたまらない。