弟は離れることを、ゆるさない



「……で、なんでいきなり弁当」


 二年の教室がある上の階段下へ着き、私の手から弁当を受け取る葵。そんな葵に、

「お母さんが葵にって。葵、どこに泊まってるの?家に帰ってきてよ」

 ーーと帰ってくるように伝えるけど、葵の表情は険しいままだ。


「お母さんも葵にお小遣い渡してないって言ってたし……」

 卑怯だとは思うけれどお小遣いのことも例に上げてみる。

「俺、バイト始めたから小遣いはいらない」

「バイトってどこ?」

「おまえのことを忘れるためにバイトも始めてんのに言うわけないだろ。悠生とよろしくやってろよ」


この間とは違う葵の強い口調に怯んでしまう。


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