弟は離れることを、ゆるさない
「は? だからってこんな頼むかよ、普通」
葵は隣のテーブルの食器を下げながら私に話しかける。
「悠生と付き合いたいとか言って俺に会いに来たとか、あんま思わせぶりなことすんなよ」
葵の発言は「悠生に失礼だろ」とでも言っているようにみえる。
「ごめん……意地になってた。もう思わせぶりなことしないから」
「そうかよ」
「私、分かったの。葵のことが大切だって。悠生くんより葵のことが大切なの。だから帰ってきて。どこにも行かないで」
面倒くさい女みたいなことを言ってしまった。
また「は?」と聞き返されるかと思っていたのに、葵は深く息を吐いて「分かった」と頷いた。
「それ食いきるの結構時間かかるだろ。俺、あと一時間ほどでバイト終わるから。外で待ってて」
「家に帰ってきてくれるの?」
「……ん」