弟は離れることを、ゆるさない
葵の言葉を信じて注文した料理を時間かけて食べきった。途中、悠生くんが「無理しなくていいですよ」と、何度も様子を見に来てお冷を注いでくれた。そんな悠生くんの想いに答えられない気持ちが余計に苦しい。
けれど、私が気持ちをぶらせばぶらすほど葵が遠のいていく。
今出ている私の気持ちは悠生くんより葵が大切ということ。それだけしか分かっていないけれど、この気持ちに嘘はつきたくない。
お会計を終え外で葵を待っていると、
「悪い、お待たせ」
葵が制服姿で出てきた。「用事あるって言って早めに抜けさせてもらった」と、私のために急いで来てくれた葵につい、嬉しさが溢れる。
もう話してくれないと思っていた。もう目も合わせてくれないと思っていた。けれど、私のことを気にかけてくれることがこんなにも嬉しい。
「うん、お疲れ様」
「皿、まっさらだったじゃん、腹大丈夫か?」
「うん。時間かけて食べたから大丈夫」
自然と歩き出す葵の斜め後ろからついていく。すると、私に手を差し出してきた。
「……え?」
「危なっかしいから、手出して」
「え……あ、うん……」
葵が言う通り手を出すと、そっと私の手に触れぎゅっと握った。