弟は離れることを、ゆるさない
私、今葵と手を繋いでしまっている。
葵の手から直で伝わる温かい熱に、何かを期待してしまいそうになる。
「悠生より大事っつーことはさ、付き合ってくれんの?」
「え、付き合う……?」
「言ってたろ。俺のこと、悠生より大事だって。あれだけ悠生と付き合うって言ってただろ」
「それは……そうだけど……」
「付き合うことで俺から変なことされるって思ってるんなら、安心していい。もう何もしない。琴音に嫌われるようなことはしたくない」
葵の私に対する気持ちは「姉弟の愛情のはき違い」だと思っていた。けれど、私も今葵に向けている感情は姉弟の愛情ではない。
葵と一人の男性として見てしまっている。
こんなこと今までなかったのに、葵が私に向けてくれている好意が嬉しい。
「お姉ちゃん」じゃなくて「琴音」と呼んでほしい。
今みたいに、もっと手を繋いだり、この間みたいに優しく愛おしく思われるキスを何度もしてほしい。
「……私、葵と付き合う」
気が付くと、私の気持ちをそう言葉にしていた。