言葉足らず。
 いつまでも現金支払い派の私とは逆に、先生はスマホでサクッと支払いを済ませたらしい。コンビニからいっしょに出ると、いつのまにか相川先生はしれっと私の隣を歩く。
 ついでにしれっと、歩道の車道側を歩いてくれる。…そういうところ、だってば。

「今終わりですか?」
「です。」
「遅いですね、相変わらず。」
「先生も、」

 先生の帰りが遅いのは外来の診察をしたり入院している患者さんの診察をしたり、夕方まで手術をしていたり。万年人手不足で残業ばかりの私たちとは、訳が違うのだけれど。
 私たちは本当にときどき、数ヶ月にいちどあるかないかだけど定時に上がれるときもあるし。

「白衣じゃないと、だれだかわかんなくなるね。」
「そんなもんですよね。」

 そう言う、先生だって。病院で会うときはだいたい黒のスクラブに白衣を羽織った姿。今は、白いシャツにグレーのニット、黒いストレートパンツを合わせた私服姿。シンプルだけど、その高い身長のせいか地味には見えない。っていうか、ちゃんと似合ってる。
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