言葉足らず。
 …とか、余計なことは考えない。

 他愛ない話と、少しの沈黙を挟みながら10分ほどいつもの帰り道をふたりで歩いた。あと5分もあれば、私のアパートに到着してしまう。

「おうち、こっちの方なんですか?」

 先生はこんなに近所に住んでいたんだろうか、と、ふと思って訊ねてみる。それにしては彼が赴任してきてから1年ちょっと、病院以外で会ったことはない。
 しばらく逡巡した先生から、いや、と予想通り否定の言葉が返ってきた。

「へ、」
「もう通り過ぎた。」
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