親愛なる魔王の君へ#2~召喚されたので、魔王の側近になります!~
ギルバートさんはそう言うと、リビングを出ていった。

少し待っていると、ギルバートさんが戻ってくる。ギルバートさんの後に続くようにリビングに入ってきたのは、肩にかかるくらいまで伸びた黒髪に紫の目をした男性だった。

彼は、僕の姿を見るなり「雨琉さん?」と僕の名前を呼ぶ。

「お前、こいつと知り合いなのか?」

ギルバートさんの質問を無視して、男性は「朝川雨琉さん、だよね?」と驚いた様子で僕を見た。

「おい、ルーチェ。無視か?」

ギルバートさんが男性に向かって声をかけると、ルーチェと呼ばれた男性は「ごめんなさい……驚きのあまり……」と言う。

「……えっと、何で僕の名前を……?」

男性――ルーチェさんに尋ねてみると、ルーチェさんは「あー、えっと……」と言い淀んだ。

「……僕、望月光なんだよね」

そっかぁ。光なら、僕のことを知っててもおかしくないよね。そっか、そっか……ん?望月光?

「えっ!?」

僕が驚くと、ルーチェさんは「驚くのも、無理ないよね」と苦笑する。

「実はね。僕、前世の記憶を持ったまま、この世界に転生したんだ」

「……そんな重大な秘密、僕のいる前で言っていいのか?」

「大丈夫ですよ。ギルバートさんは、秘密をペラペラと喋るような人じゃないでしょう?」
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