降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
美冬から離れて、私の前まできた。


「誠さんはさ、優しいんだよ」

「知ってます」

「ははっ。だよね~」

「はい」

「任せてよ」

「……え?」

「全力で守り抜くよ。誠さんも、誠さんの“特別”も」


私の目を見ているその瞳からは、強い“決意”を感じる。

私に宣言した意味は分からないけど、桐生さんにもこんなに頼もしい仲間が居ると知れて、嬉しかったしホッとした。


「つーか、この男どーするわけ?そっちで処分すんの?」

「ああ、うん。うちで預かるよ」

「あっそ。じゃあもういいわ」


美冬は私と目を合わせることなく、この場を去ろうとしている。


「美冬……待って!!」


美冬の手を掴むと、パッと振り払われてしまった。


「ごめん」

「なん……で……」

「ごめん」

「どうして謝るの……?」


私を見ようとしない美冬。


「……約束、破ったから」

「違う、これは違うよ!!美冬は私を守ろうとっ……」

「あたしが怖かったでしょ」

「え?」

「怒りで何も見えなくなった。何も聞こえなくて……」

「それは私の為にっ……」

「はっきり言えよ!!!!」


美冬の怒鳴り声が辺りに響き渡る。

握り拳を震わせて、うつ向く美冬がとても弱々しく見えた。


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