降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
「私はどんな美冬だって好き、大好き!!嫌いになんてなれないよっ!!」

「ごめん……っ、梓。逃げてたのはあたしの方だったっ……」


私達は抱き合って、泣いて、泣いて、これでもかってくらい泣いた。


── 美冬と外へ出ると、車にもたれながら煙草を吸っている桐生組の人。


「おっかえり~」

「……ねぇ、美冬」

「ん?」

「あの人って……」

「ただの鬱陶しいストーカー」


“これ以上聞いてくれるなよ”という圧を美冬から感じて、お口にチャックした私。


「送ってくよ~。乗って乗って~」

「あ、ありがとう……ございます」

「あたしはいい。梓のこと頼むわ」

「へぇ、そういう態度かぁ……峯ちゃ~ん」


ニヤニヤしながら美冬を見ている。

美冬はげんなりしながら舌打ちをして、荒々しく車に乗り込んだ。

それを満足気に見て、私へ手招きをしている。


「ほらほらぁ~。梓ちゃんも乗って~」

「あ、はい……」


──── あの美冬に言うことを聞かせれるこの人って、マジで何者……?


「美冬」

「ん?」

「大事な話があるの。今日、家に泊まってくれない?」

「……わかった」

「ええ~。いいなぁーー。俺も峯ちゃんとお泊まりしたーーい」

「アンタは黙ってろ」


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