降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
「んもぉ、酷いなあーー。そんな子にはチューしちゃうぞぉ?」

「馬鹿も休み休み言え。つーか、何も言うな。マジで黙ってろ」

「はははは……」


苦笑するしかない私。

ていうか、この二人……どういう関係?


「あ、そう言えば聞いたよ~?梓ちゃん」

「え?」

「あの男に『あの人に傘を貸すのはこの私!!』って言ったんだってね~。端から聞いたら何言ってんの?って感じだろうけど……俺には伝わったよ。梓ちゃんの“覚悟”が」

「…………いいんですかね」

「ん?」

「私がっ……」

「それを決めるのは二人でしょ~?俺に聞かれても困るって~。俺、自分のことで精一杯だしぃ?ね、峯ちゃん」

「……知るか。鬱陶しい」


それから美冬達がガミガミ言い合ってるのを、ただ傍観するだけの私だった──。


「んじゃ、またね」

「あのっ、ありがとうございました」

「いえいえ~。これからも誠さんに傘貸してやってよ。頼むね~、梓ちゃん」

「任せてください」

「ははっ。いいね!じゃ、峯ちゃん連絡よろしくぅ」

「知らん」

「ふーーん。ま、いいけど?どうなっても知んないよ?」

「……チッ。さっさと帰ってくんない?うざい」

「くくっ。可愛いね」

「うぜえ」


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