降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
なんとなく梓が深いキスを求めているのが伝わってくる。
それが無性に愛おしくて、めちゃくちゃに抱き潰したい欲に駆られる。
理性がブッ飛びそうで、欲を抑えきれる保証がない以上、梓を怖がらせるんじゃないかと、触れるだけのキス止まりになっちまう。
──── 梓はどんな表情で、どんな声で俺を求めてくんだろうな。
梓を抱きたい。
抱き潰して、これでもかってくらい愛してやりたい。
心も体も、奥の奥まで俺で満たして、埋め尽くしてえ。俺以外のことなんて考えられねーくらい、俺でいっぱいになればいい。
俺じゃなきゃ満足できねえ心と体になっちまえばいい。
──── そんな邪な気持ちが俺を支配していく。
「……チッ。怖がらせるだけだろ、こんなもん」
梓が怖がらねえように、時間をかける必要がある。
焦れば梓を傷付けるかもしれねえ。
抑えろ、俺の欲なんざどうだっていい。
梓から貰った飯を食って、シャワーを浴びながら梓のことを想い──── 我慢しきれずヌいた。
「……ガキでもあるめえし……何やってんだ、俺」
洗ったタッパーと梓の好きなチョコレートを持って、頭の中を空っぽにしながら梓ん家に向かった。