降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。
余計なお世話すぎるでしょ、この発言は……。

もしかしたら桐生さんは、雨に打たれるのがめちゃくちゃ好きな人なのかもしれないじゃん。


「……学校、時間大丈夫か」


・・・・あ、やばっ!!今日寝坊しちゃったから電車の時間がっ!!


「大丈夫……ではないです!!これ、はい!!傘!!それ使ってください!!」


桐生さんに傘を押し付けて、私は走りながら折り畳み傘を広げた。


「気を付けて行って来いよ、梓」

「桐生さんもーー!!」


私は雨の中走って、ちょっとだけ振り向いて桐生さんに手を振った。

桐生さんが手を振り返してくれることはないって、そんなことは分かっていたけど、無意識で手を振ってしまった私って相当ヤバいなって、すぐ我に返る。

私は何事も無かったことにしたくて、無心で駅までダッシュした。

そして、今になって桐生さんとのやり取りが頭に浮かんでくる。


『気を付けて行って来いよ、“梓”』

『桐生さんもーー!!』


────── え……え?……うえぇえっ!?


な、なっ……下の名前呼び!?『梓』って言ってたよね!?

いやいや、どういうこと?どういう魂胆!?え、なんで!?どうして!?


・・・・・・うーーん。

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