君のスガタ
「分かりました。言葉に出せないほど、私の告白はなかったことにしたいんですね。分かりました」

 私はそう言ってから、立ち去った。

 自分が松永先輩の対象になるなんて、無理なんだよ。松永先輩は違う人を想っている。

 恋なんてしないと言っているかのように困っていた。

 そうだよ、私が松永先輩の想い人になれる訳ではない。

        *

「……っ」

 俺は声も出なかった。

 右拳を握りしめて、下を俯いた。

 答えられなかった。

 柚が俺に告白してくれるとも予想だにしていなかった。

 俺にはそんなことを言う資格があるのか?

 柚には助けられてばかりで答えられない自分に腹が立つ。

「はぁ…ああああっ…」

 俺は手に持っていたラケットを投げ出した。

 一人、テニスコートで立ち尽くした。

「慶!!」

 斗真は強引にドアをバンッと開けて、俺の名前を大きな声で呼んだ。

「なに」

 俺はイラついた声で聞き返す。

「なにじゃないだろ。お前、柚ちゃんになんで答えなかったんだよ。柚ちゃん、勇気振り絞って言ったことを無駄にするのかよ!」

 斗真は自分が首に巻いていたタオルを俺の前に投げ捨てた。
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