ブルー・ベリー・シガレット
事件が起きたのはその翌日。
昨日の言いつけなどすっかり記憶から飛んでいた俺は、他の友だちに誘われるがまま楽しく遊具で遊んでいた。
男の子たちで占拠していたジャングルジムにずかずかと大股で歩いて来たのは、一方的な約束を交わしたひとりの女の子である。
こちらを睨みつける鋭い眼差しが向けられたところでようやく例の命令を思い出す。絵本の続きが気になって、聞き流してしまった俺に非があるのは認めよう。
それなりに責められるのは仕方ないと腹を括り、俺は素直にジャングルジムからするすると降り立った。
わりとお利口な子どもという自覚があるので、怒号を浴びるなど滅多にないことだ。大きな声を出されるのは嫌だなあと思いつつ覚悟を決めてお叱りを待っていると、俺の想像よりもオクターブ高い声が鼓膜をぶん殴ってきた。
「ふじくんは、あたしのことなんてどうでもいいんだよね!!!」
突如とした女の子のヒステリックな叫びに子どもの俺はお手上げである。謝る準備をしていた心は想像を超えた剣幕に狼狽えてしまい、俺は曖昧な返事しかできっこない。