別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「可南子がうまく間に入ってくれているおかげだな」

「綾人が丁寧に凌空に歩み寄ってくれるからだよ」

 結婚したからとか、血の繋がりがあるからとか、子どもには関係ない。綾人が積極的に凌空に関わろうとする一方で、彼のペースに合わせて接してくれているからだ。おかげで凌空は綾人に懐いて甘えるようになった。

 凌空が不機嫌になってぐずっても、綾人は私に丸投げせず、凌空と向き合って彼の気持ちを大事にしようとしてくれる。凌空がワガママを言ったら、注意して諭してくれる。

 子どもは純粋で敏いから、そばにいる大人が真剣に自分と接してくれているのかきちんとわかっているんだと思う。

「飛行機好きという共通点があるのは強いな」

 私は笑いながら頷いた。今に凌空も飛行機のメーカーや機種を 区別しそうだ。

「うん。凌空のお父さんは飛行機のパイロットだってずっと言っていたから、乗ったこともないのにすっかり飛行機が好きになって……」

「ずっとって、いつから?」

 不思議そうに聞き返され、思考が停止する。綾人と出会った頃から凌空は飛行機が好きだったから、彼が父親だと告げてからだと言うと矛盾してしまう。

「あ、あの……。父親がいなくても、凌空はお父さんから愛されているんだって、伝えておきたくて、それで、あの……」

 しどろもどろに言い訳するが、それにしては具体的すぎだ。自分のあずかり知らぬところで存在する子どもに、勝手に父親として語られていたなんて……本人としては気持ちのいい話ではないだろう。

 ましてや、私から綾人に連絡するつもりも、凌空の存在を知らせるつもりもなかったのだ。
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