別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 さらに一歩踏み出し、多恵さんは訴えかけるように続ける。

「彼女、別の男性と結婚する予定だったんです。綾人が海外訓練に行くからってその人に乗り換えて、一方的に振ったんですよ。その男性とうまくいかなかったから、今度は綾人に擦り寄って子どもを盾にして結婚を迫って……。信じられます、彼女のこと? また綾人を裏切って傷つけますよ」

 事実とは異なる彼女の説明に「違う!」と否定しようとして声に詰まる。

『どんなに言い訳してもあなたが綾人を裏切った事実は変わらないわ』

 否定ってなにを? 綾人と結婚した経緯はともかく、彼と別れた理由は……。

「まったく。綾人くんはもっと賢いと思っていたよ。こんな失敗をするなんて」

 多恵さんの説明に、彼女の父親は明らかに嫌悪と侮蔑の眼差しで吐き捨てる。

 心臓がドクドクと壊れそうに痛い。なにか、なにか言わないと。

 隣に座っている凌空は、周りをキョロキョロ見つめ不穏な空気を感じたのか、不安そうな面持ちで私にしがみついている。

「おかあしゃん」

 私はどう思われてもいい。けれど凌空は――。

「私は」

「大きなお世話ですよ」

 口を開きかけた瞬間、綾人の凛とした声が響き、凌空と共に肩を抱き寄せられる。
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