別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「さっきから黙って聞いていれば、随分勝手なことばかり言ってくれますね。息子は疑いもなく僕の子どもです。それに勘違いされているようですが、僕が妻を諦められなくて、必死に結婚を申し込んだんです。あなたのお嬢さんと結婚? それこそ失敗そのものだ。冗談じゃない」

 綾人の反論に多恵さんの父親は顔を真っ赤にし、怒りに震えている。

「なっ、娘を弄んで裏切った君がなにを言うんだ? 付き合ってすぐに別れを切り出したそうじゃないか。当時、娘が君を庇ったから口を出さなかったが、あまりにも不誠実だろう!」

「あなたが娘と付き合えとうるさい上、娘さんも気持ちがなくてもかまわないから、という話で始まった交際です。とはいえ不誠実な真似はしていませんよ。最初から裏切って不誠実だったのは彼女の方です。そんな彼女に時間を無駄にしてまで付き合う義理もないと、さっさと別れた。それだけです」

 激昂する多恵さんの父親に、綾人はどこまでも冷たく返す。正直、いつも優しい綾人のこんな姿は初めてだ。

「娘が不誠実だと? 言いがかりだ!」

 綾人はなにも返さずに席を立つ。そしてリビングにある書類棚からA4サイズの封筒を取り出して、戻ってきた。

「どうぞ。じっくりご覧になってください」

 そう言って中身を取り出し、テーブルの上に放り投げる。そこには何枚もの写真と報告書のようなものがあった。

「これは……」

 多恵さんの父親が信じられないといった面持ちで写真を一枚手に取る。私が見てもいいのかと思いつつとちらりと目に入った内容に驚く。
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