別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 付き合っていたっていつ?

 その疑問は顔に出ていたのか、川嶋さんは微笑みながら続ける。

「綾人があなたと付き合い出す前ね。些細なすれ違いがあって、将来結婚するのは決まっているけれど、お互いに一度距離を置こうって話になったの」

 川嶋さんの口調はゆっくりで、ねっとりとした声が耳に絡みつく。

「綾人、いろいろ疲れちゃったのかしら? だから将来のこととか考えなくてもいい、自己主張しなさそうな平凡なあなたに気晴らしに声をかけたんでしょうね」

「自己主張しなさそうって」

 彼女の発言に怒りよりも先に戸惑いが隠せない。川嶋さんは小さく鼻を鳴らした。

「綾人から聞いてるわよ。自分から会いたいとか言わなくて、いつも綾人の都合のいいときだけ会ってくれるって。便利な存在ね」

 綾人が彼女に私のことを話しているのが衝撃だった。内容は当たらずとも遠からず。川嶋さんが適当に言ったとも思えない。そうなると私の知らないところでふたりは会っていた? 綾人は私の話を彼女にしていたの?

 さっきから心臓がバクバクと音を立て、胸が痛む。そんな私を川嶋さんは蔑むような目で見てくる。

「私だったら好きな相手には毎日でも会いたいから理解できないわ。実は綾人のことはそんなに好きじゃなくて、彼がRHHのパイロット候補で、シャッツィの御曹司っていう肩書きに惹かれて付き合っていたんじゃない?」

「ち、違います!」

 勢いに圧されそれまでは黙ったままでいたが、反射的に叫んだ。しかし川嶋さんの冷ややかな視線は変わらない。
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