別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 アメリカは遠いから今以上に会えなくなる……遠距離恋愛だよね? できるかな? 過ぎたらあっという間だけれど、やっぱり一年は長い。その前に綾人の家柄を考えたら、私と結婚なんて――。

 想像して頭を振る。ひとりであれこれ考えてもしょうがない。

 いい加減、今後の私たちの関係について話すべきだよね。今度会ったときに、綾人からなにもなかったら私から切り出してみる?

 意識すると心臓が早鐘を打ち出したので、思考を切り替える。そのときインターホンが鳴り、顔を上げた。ネットでなにか買った覚えはない。

 おそるおそるドアを開けると、初めて見る綺麗な若い女性が立っていた。

「はじめまして、山口可南子さん」

 名前を呼ばれて驚きと不信感が隠せない。

 しっかりと手入れされたサラサラの茶色い髪に、モデルさながらに施されたメイク。身にまとっているワンピースは上品でコートと同じ有名な高級ブランドのものだ。

「あの……」

川嶋(かわしま)多恵(たえ)。綾人の婚約者です」

 唐突に語られた自己紹介に鈍器で頭を殴られたような衝撃を受ける。理解が追いつかない私に、川嶋さんは哀れみのこもった笑みを浮かべた。

「驚かせてごめんなさい。私の祖父は川嶋工業の社長をしていてね。綾人のおじいさまとは知り合いなの。そのつながりもあって父や私も含め家族ぐるみのお付き合いをしていてね。彼とは幼いときからお互いによく知っていて、実際に付き合っていたのよ」

 次々と告げられる情報に頭がついていかない。
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