別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 一方的に言い切って川嶋さんは踵を返して去っていく。

 彼女の背中が視界から消えても私はしばらく動けなかった。

『前にすっごく美人などこかのご令嬢と付き合っていたとは聞いたけれど……』

 あれは川嶋さんのことだったんだ。でも婚約者ってどういうことなの?

 綾人に電話しようとして、すぐに思い留まる。彼は仕事中だ。

 気持ちがぐちゃぐちゃで上手く話せる気がしない。それに今、彼は試験前で大変だと言っていた。それどころではないと思う一方で、結局は自分の気持ちを押し切れず、電話するのを諦める。

 川嶋さんの言うとおり、綾人と具体的に将来の話などしたことない。川嶋さんの話がどこまで事実かはわからないが、私自身のことや綾人との付き合いについて知っていたということは、綾人が彼女と連絡をとっていたのは間違いないのだろうか。

 目の奥が熱くなり、ぎゅっと身を縮めた。会いたい。綾人と会って話したい。不安で胸が押し潰れそう。今日、綾人の仕事が終わったら電話してみる? でも電話じゃなくて、直接話したい。

 複雑な思いを抱えつつ週末を迎えた。久々の週末休みなのに、まったく気持ちが晴れない。ダラダラ過ごしてはため息をつく。そのとき電話が鳴り、慌てて相手を確認する。相手は三つ年上の姉だった。

 珍しいと思いつつ電話に出ると、年末年始に実家に帰省してほしいと開口一番に告げられる。

「でも年末年始はちょっと予定が……」

『可南子にも都合があるのはわかっている。でもちょっとお父さんお母さんに関わる大事な話がしたいの』
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