別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「え?」

 両親は夫婦でイタリアンレストランを経営している。イタリアの三つ星ホテルで修行経験のある父の腕はそれなりに好評で、地元では知名度も高く人気店として、いつも多くのお客さんで賑わっていた。

 系列店も出していて、来年のうちにさらに新しいお店も出す予定になっている。

「お父さんかお母さんの体になにかあったの?」

 まず思い浮かんだのは、両親のどちらかに病気かなにかが見つかった可能性だ。しかし姉はすぐに否定する。

『ふたりとも元気よ。ごめんね、また会ったときに詳しく説明するから』

 神妙な姉の声に私は帰省を拒否することも、それ以上追及もできなかった。

 電話を終え、スマホの画面を見つめる。とりあえず綾人に年末年始は一緒に過ごせなくなったと伝えないと。

 残念な気持ちが隠せない。いつも通りメッセージを送ろうとしたけれど、やっぱり直接伝えたい。私は衝動的に綾人に電話した。

 川嶋さんが現れてから、綾人と会うどころか声も聞いていない。

 しょうがない、彼は忙しいんだ。わがままなんて言って綾人の邪魔になるわけにはいかない。

 でもこのときは堪えられなくて電話を鳴らす。ところが、数コール目ではたと気づく。今日、綾人は用事があると実家に帰っている日ではなかっただろうか。

『可南子?』

 電話を切ろうとしたタイミングで先に綾人が出た。

「ご、ごめん。ご実家で忙しいときに」

『大丈夫だよ。どうした?』

 久しぶりに聞く綾人の声は穏やかで、胸が詰まる。
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