エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
 いい歳した大人が誰かに手を繋いでもらって添い寝してもらわないと眠れないだなんて、情けないことこの上ない。

 きっと朔夜さんも迷惑しているだろうに、優しい彼は根気よく私のわがままに付き合ってくれている。まあ朔夜さんにしてみたら、子どもを寝かしつけてあげている感覚なのかもしれないけれど。

 とはいえ、いつまでも甘えるわけにはいかない。

 この同居は、期間限定のものなんだから。
 そのうち私は──この家を、出ていかなくてはならないのだから。

 ……添い寝要員として、大きいぬいぐるみでも買おうかな。

 いよいよ子どものような手を考えていると、玄関から鍵の開く音が聞こえた。私はハッとしてそちらを見る。


「……陽咲、まだ起きてたのか」


 コートを着た朔夜さんが、外の冷気を連れながらリビングへと入ってきた。


「おかえりなさい、朔夜さん」
「ただいま。疲れた……」


 曖昧に笑って答えた私に、彼は疲労のにじむ声音で返す。

 取引先の周年記念パーティーの後、会場で会った知り合いの社長さんに連れ回されたらしい。

 ちなみに田宮さんは、パーティーが終わっていつの間にかいなくなっていたのだとか。さすがの身のこなしである。


「最後までなんとか酒は断ったけど。眠いし、本当にもう、疲れた」
「お疲れさまでした」


 ラグにあぐらをかいて座りながら切実な表情と声で話す彼に、苦笑しながら労いの言葉をかけた。

 そういえば、朔夜さんはお酒が苦手らしい。まったく飲めないわけではないけれど、酔いやすいのだとか。

 立ち上がった朔夜さんがコートをバサリと脱いで乱雑に床へ落とし、今度は私の隣に身を沈めた。
 
 彼の体重を受けて、少しだけソファが沈む。
< 53 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop