エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
 翌日、日曜日。
  

「すみません朔夜さん、お待たせしました」


 出かける準備を整え終えてリビングに現れた私を、ソファでくつろいでいた朔夜さんが迎える。


「いや、……それは、こないだ買ったワンピースだな」
「はい」


 こちらを眺める朔夜さんの視線にちょっと恥ずかしくなりながら、私はワンピースの裾をつまんで見せた。

 彼が、ふわりと笑う。


「やっぱり、似合ってるな」
「あ、ありがとうございます……」


 まっすぐな褒め言葉に、今度こそ思いきり照れたけれどなんとか礼を言う。

 すると、朔夜さんが私を見つめながらなにか考え込むようにしているのに気づいて、首をかしげた。


「朔夜さん?」
「……そのワンピースだと、あのネックレスがつけられないな」
「え? そう、ですね……?」


 朔夜さんの言う『あのネックレス』とは、彼がくれたペリドットのネックレスのことだろう。

 今着ているワンピースはバンドカラーで、首もとが詰まっているデザインだ。あの繊細でシンプルなネックレスはデコルテが開いた服の方が映えると思ったから、私も今日はつけなかったんだけど……。

 少しの間の後、朔夜さんは神妙な顔つきで頷いた。


「わかった。今日はピアスを贈ろう」
「へっ!?」


 突然脈絡なくプレゼント宣言をされて、私は驚く。


「いきなりどうしてですか!?」
「ピアスなら、そのワンピースでもつけられるだろ?」
「ええぇ……?」


 いとも簡単に返されて困り果てる。もしかして、決定事項……?

 朔夜さんて、人にプレゼントをするのが好きなんだろうか。というか、私のことを甘やかしすぎだと思う。

 ここで私がまた何か返しても話が終わらなさそうなので、一旦考えることを放棄した。


「えっと……とりあえず、行きましょうか」
「ああ」


 今日のお出かけの目的は、数日前にうっかり割ってしまった私のマグカップを買うこと。もともとひとりで行くつもりだったのだけれど、朔夜さんも付き合ってくれることになったのだ。

 これ以上なにかをもらうのは申し訳ないし、絶対流されないようにしなきゃ。

 玄関へと向かう彼を追ってその背中を見つめながら、私はそうひそかに決意したのだった。
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