エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
 朔夜さんの運転する車で私たちがやって来たのは、一見マンションのように見える建物。
 両親と兄の骨が納められている、屋内型納骨堂だ。

 駆け落ち同然で一緒になったらしい両親の親類とは私たち兄妹は会ったこともなく、当然先祖の墓がどこにあるかも知らなかった。
 
 だから両親が亡くなった際、その御骨をどうするか迷ったのだけれど……兄と話し合った末、新たに墓石を建てるのではなく屋内型納骨堂を利用することに決めたのだ。

 永代供養が付いているし、駅から近い立地で天候も気にしなくていいからお参りもしやすい。あのときは……まさかこんなに早く、兄までお世話になるとは思ってもみなかった。

 朔夜さんと連れ立って建物に足を踏み入れ、受付機で専用カードをかざす。そうすると、いくつかある参拝ブースのひとつに自動で遺骨がセッティングされるのだ。

 ここはいつでも綺麗な花が飾られていて、室内も明るく清潔だ。大切な家族を任せるのに、いいところを見つけられたと思う。

 今は『春日家』という表示になっている参拝ブースで、私たちは手を合わせた。目を閉じながら、心の中で近況報告をする。

 朔夜さんに、とてもお世話になっているよ。
 私は、元気でやっているよ。

 ふとまぶたを開けて隣に立つ朔夜さんに視線を向けると、彼はまだその長いまつ毛を伏せ、私の家族に熱心になにかを伝えているようだった。

 うつむきがちに両手を合わせているその顔を、ぼうっと眺める。

 本当に、きれいな横顔。すっと通った鼻筋も、顎のラインも、唇の形も、芸術的な美しさだ。

 不意に彼が目を開けてこちらを向いたから、思いがけなく視線が絡んだ。不躾に凝視していたことが後ろめたくて、私は焦る。
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