エリート会長は虐げられ秘書だけを一途に溺愛する
 純粋に嬉しかった。この怒涛の数日、神崎グループに入社できた理由は、父とのことがあったからだと決めつけている節があった。
 だからこそ、私を見て採用してもらえたことが何よりも心の支えとなった。
「学歴を恥じていることは知っていた。それをカバーするように君は秘書課の人間として求められていることに尽くしてきただろう」
「そんな……私がしていたのは」
 秘書の秘書。大きな仕事など一度も担当したことはない。
 それでも──
「君がしていたことは、秘書として必要なことであり、人として大切なことだった。人を支えることは簡単なものではない。それからもずっと君のことだけを見ていた」
 私の仕事ぶりを見てくれていたのは本当だった。
「だが、今度は俺が君を支えたい」
 じんわりと目頭が熱くなっていく。
「……私は、千隼さんに相応しい身分を持っていません。それでも私でいいんですか?」
「君がいい。君だから愛しているんだよ」
 その愛を受け止めるように、涙が頬を伝っていく。これは悲しみから生まれるものではない。
 この人の前で緊張ばかりしていた。それでも今、こんなにも心が穏やかでいられるのは、私を見る彼の双眸があまりにも温かいからだ。
「……よろしく、お願いします」
 胸がいっぱいになりながら、彼との結婚を受け入れた。そして、
「秘書としても力になりたいんです。私にも、千隼さんを支えさせてください」
 この人のそばにいたい。いつまでも。
 その直後、熱い胸板に抱きしめられる。わかった、と言ったその声は、どこか震えていた。もしかしたら、千隼さんもまた、私と同じ気持ちでいるのかもしれない。
 嬉しさが奥底からこみ上げてくるような満ち足りた気持ちを。

「幸せにすると誓おう、杏子」

 私は、神崎グループの新会長、神崎千隼の秘書となり、正式に結婚します。


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