幼馴染から助けてくれた常連さんに囲い込まれました。
「私はお2人に少々憤りを感じているのですよ?一度は美夜さんの意思より青山家と縁戚関係になることで得られる利益を優先した…彼女がどれほど追い詰められたか理解してますか?これは完全なお節介なのですが、美夜さんは気持ちを整理するためにお2人と距離を置いた方が良いと思ったんです。美夜」
突然こちらを向いた。両親を責めている冷たい声音と全く違い美夜の名を呼ぶ声が酷く甘く、状況も忘れて頬が緩みそうになる。
「美夜はどうしたい…?言いたいことがあるなら言ったほうがいい」
美夜は膝の上に置いた手をギュッと握りしめて、両親を見据えた。自分の手の上に一回り大きい手が重ねられる。それだけで勇気づけられる、1人じゃないと。
「…私ずっと和樹くんに酷いこと言われてるって伝えてたのに、お母さんは全く取り合ってくれなかった。お父さんも私と和樹くんの仲が悪くなると都合が悪いからって見て見ぬ振りしてたよね…お父さんのために私が我慢すればいいんだって耐えてた。和樹くんには何をしても否定されて、お前みたいなやつは何も出来ない、取り柄もないどうしようもない奴って言われ続けて心はずっとすり減ってた。婚約しろって言われた時一度心が壊れかけたよ、カイさんが居なかったらどうなってたか分からない」
一気に話したので息切れを起こす。呼吸を整えた後、続ける。
「正直お父さん達に対する信頼は無くなりかけてるし未だに怒ってる…だから少しの間距離を置きたいです、お願いします」
美夜は頭を下げる。横でカイも頭を下げたのが分かった。下げる直前、2人とも酷くショックを受けていた。娘に信頼してない、と言われれば無理もない。けど言わなければならなかった。
やがて顔を上げると、2人は後悔に満ちた表情をしていた。唇を震わせ、何かを考え込んでいる。
暫くすると、父は「…今まですまなかった」と告げた。母は何も言わなかったが、美夜は何とも思わなかった。