幼馴染から助けてくれた常連さんに囲い込まれました。
その後、取り敢えず身の回りの必要なものだけキャリーバックに詰めて家を出た。後日カイが業者を手配してくれるらしい。そこまでしなくても、と断ったがカイの意思は硬く、折れた美夜はありがたく厚意を受けることにした。
家を出て、車を停めた駐車場まで向かおうとした時。
「美夜!」
自分の名を呼ぶ声を聞いた瞬間、身体が強張った。何度も聞いた、時に夢にまで出てきた、彼の声。聞きたくないと、会いたくないと願っていた、彼の。
美夜の異変を察したカイがすぐさま肩を抱き寄せる。そんな2人の前に彼が辿り着いた。急いできたのか額は汗ばみ、その端正と評される顔は怒りに染まり余裕は一切見られない。追い詰められた人間の表情だった。
「お前!親父に何吹き込んだ!いきなり呼び出されたと思ったら、美夜にやってきたことが全部バレて死ぬほど叱られた挙句、お前みたいな性根の歪んだ人間を跡取りに据えることは出来ないって…!和彦を後継にするって言ってるんだぞ!」
和樹は怒りのあまり一方的に捲し立てる。男の怒号は聞くだけでビクリと肩が跳ね、恐怖で身体が強張った。
(和彦って従弟の…彼は和樹くんと違って穏やかな性格。少なくとも和樹くんより相応しい)
そんなことを考えて意識を遠くにやってないと、美夜に怒りをぶつける和樹を前に気丈に立っていることすら危うい。彼から与えられた言葉の暴力は美夜を確実に蝕んでる。反論すると倍になって返ってくるから、逆らわない方が、耐えた方が楽。今までずっとそうだった。
そう、今までは。これからは…。