『運命の相手』を探すあなたと落選した私
 ルシアンと同居を始めて二ヶ月が過ぎた。
 ルシアンに勧められて、ずっと食事は彼の部屋で一緒に()っている。
 私が二人分の朝食を彼の部屋まで運んできて――ここまでは、昨日までと同じだった。

「ルシアン?」

 部屋に入った途端、彼は目を()らして私を見ているような素振りを見せた。

「……カエナ、背が伸びた?」
「えっ」

 私は思わず早足で、部屋の中央にあるテーブルに朝食を載せた盆を置いた。
 それからルシアンの側へ行き、私を視線で追っている彼の目を(のぞ)き込む。

「見えるようになったの?」
「あ、いやぼんやり(りん)(かく)がわかるようになったくらいだ。悪い、驚かせて」
「ああ、そういうこと……」

 私が驚いたのは、果たしてルシアンの回復の早さだったのか。もう彼との生活が終わってしまうことへの恐怖ではなかったか。
 ルシアンが快復するのは、素直に嬉しいと思っている。けれど、それと同時にこのまま彼が快復しなければと思ってしまっている自分がいることを、私は知っている。
 ルシアンの目が完全に快復する前に、もっと感情が表に出ないように気を付けなくては。彼が再び村を出て行くその日まで、一日でも長く彼の側にいられるように。

「ルシアンの方こそ、随分と伸びたじゃない。五年前は今の私より小さかったはずだもの」

 言いながら食卓に着けば、ルシアンも「そうだったか?」といつもの場所に着席した。

「そうよ。ちゃんと目が見えるようになったら、背比べした柱の傷を見てみるといいわ」
「そういえば、そんなものもあったな」

 感謝の祈りをして、それから他愛もない話をしながら食事をする。そんないつもの食事風景。
 毎日繰り返される「いつもの」が消えてしまう日が着実に近づいているのを、私は見ない振りをした。
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