御曹司は不遇な彼女に本物の愛を注ぐ
「お前の仕事先にはここにいる秘書を使え。頼めば送り迎えをしてくれる。土地勘もわからないだろうから迷子になるだろ?」

「そこまでしてもらうわけには……」


秘書さんは神宮寺さんの秘書さんであって私のお世話係じゃない。ただでさえ家にお世話になるのにこれ以上のことを頼むわけにはいかない。


「それは俺とお前が他人だからか?」

「へ?」


「だったら俺の恋人になれよ」

「えぇ!?」


「仮でもいいさ。そしたら仕事先にも前の同居人にも復讐出来るだろ」

「前の、同居人……」


そうだ。スマホの電源を切っていたから忘れていたけど、公孝から返事来たかな?


恐る恐る電源をオンにした。するとピコンピコン!と音がなり、そこには大量のメッセージが来ていた。


『死ぬなら誰にも見つからないところで死んでろ!』

『俺を一人にしたこと、ぜってぇ許さねぇ!』


『庶民のお前なんか、こっちから願い下げだ!』

『俺が振ったんだからな!お前は可哀想な女!負け犬!』


「っ……」


死ぬなんて一言もメッセージには書かなかったのにどうしてバレているの?
いや、そんなことよりも公孝は私が死んでも何も思わないってことだよね?


お金だって十分すぎるくらい渡してきたよ。毎日食べるものに困るくらいあげたよ。
ボーナスでコンビニのスイーツを買おうとしたよ。でも、それも許されずボーナスも全て公孝に奪われた。


風俗やキャバクラ通いは当たり前。私には無駄遣いするなとか家にいろとか言うのにね?ギャンブルだって毎日してるよね。
危ない人と繋がって危険なお金に手を出してるよね?保証人を私にしようとしてるの知ってるよ。


全部知ってて黙ってた。私は公孝に殴られても公孝がいつか昔みたいに戻ってくれると思ったから。だからどんなに辛いことも我慢できた。

たとえ好きと言われなくても。キスはおろか手すら繋いだ記憶はないけれど。公孝が優しかったのなんてほんの一瞬。


あれは最初から私を騙すために作っていた笑顔?フラれたことに腹なんて立たない。公孝の本音は全部メッセージを通してわかったから。


もうあんな家には二度と戻らない。公孝にだって会いたくない。
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